LINDELLのデザイナーである ガブリエル・ソーヤー は、スカンジナビアの感性と、素材・製造技術に関する深い知識を融合させ、一年の多くを インド北部やネパールを旅しながら培った繊細な感性をデザインへと昇華させています。彼女の作品は、現地で出会った熟練した職人たちの手によって、刺繍、織り、染色のすべてが一点ずつ手作業で行われています。
それぞれの工程には、素材への敬意と時間をかけた手仕事の温もりが宿っています。LINDELLのクッションは、**インド・カシミール地方の伝統工芸である「アリ刺繍」によって作られています。「アリ」とはヒンディー語で「フック」を意味し、通常の刺繍針ではなく、木製の持ち手に金属製のフックがついた特殊なかぎ針(アリ)**を用いて刺繍します。アリ刺繍は、ミシン刺繍のように布を強く張る必要がなく、職人が生地の厚みや質感に合わせて、柔らかく立体的にステッチを重ねていくため、ふんわりとした風合いと、自然な陰影のある刺繍が特徴です。布と刺繍の一体感が生まれ、光沢を抑えた優しい質感が生地そのものの美しさを引き立てます。この技法は18世紀、ヨーロッパでも高く評価され、フランスやイギリスの多くのメゾンがこの伝統的なアリ刺繍を取り入れた作品を制作していました。時を経て、各国の文化や美意識と融合し、さまざまな刺繍技法へと発展していったといわれています。アリ刺繍の魅力は、一針ごとに異なる素材を組み合わせたり、複数の糸を同時に縫い込むことができる柔軟さにもあります。職人が刺繍の表面を直接見ながら作業することで、即興的かつ直感的にデザインを変化させることができる、その自由で有機的なプロセスこそが、LINDELLのテキスタイルを唯一無二の作品へと導いています。